認知症になるといろいろなことができなくなってしまいます。例えば、預金口座の解約や引き出し、生命保険の加入・変更・受取、遺言や贈与などの相続税対策、不動産の売却・建設・賃貸契約・・・日々の生活にかかわるさまざまな契約ごとがすべてできなくなります。ではどうすればよいのでしょうか。今回は不動産と認知症について簡単にまとめてみました。
不動産売買と認知症
不動産の所有者が認知症などで「意思能力」が無くなっている場合、通常、不動産売買はできません。
所有者が重度の認知症の場合は、成年後見制度(法定後見人制度)を利用すれば不動産の売却ができる可能性があります。
成年後見制度は本人の財産を守ることが目的なので、成年後見人がついたとしても、希望通りに売買や契約ができるとは限りません。
〇法定後見制度を使って不動産を売却する手順
1.「成年後見制度開始」の審判を申立てる
2.家庭裁判所により審理(必要があれば医師の鑑定を受ける)
3.法定後見人が選定される
4.不動産会社と媒介契約を結んで不動産を売り出す
5.居住用不動産の場合は裁判所の許可を受ける
6.買主と売買契約を結ぶ
7.決済、引渡し
成年後見制度には、大きく分けると法定後見制度(家庭裁判が法定後見人を選ぶ)と任意後見制度(本人が後見人を選ぶ)の2種類があります。例えば、認知症ではないけれど、高齢の親の先々に心配がある場合は任意後見制度を利用することができます。この制度を利用するには、公証人役場で親と任意後見契約を結び、親の判断能力が衰えてきたときに家庭裁判所で改めて手続きを行います。
また、認知症対策に有効と言われるのが、家族信託(民事信託)です。家族信託は「信頼できる家族に財産を託す」という仕組みで、実質的に財産の所有者としての立場を維持しながら、家族に財産の管理・処分権限を与えることができます。つまり、あらかじめ家族信託を設定しておけば、認知症になったときも財産の売却等について、家族に任せることができます。家族信託は契約ですので、委託者と受託者の合意が無いと成立しませんから「意思能力」が無くなっている場合はできません。家族信託については今度詳しく書きたいと思います。
不動産相続と認知症
不動産を法定相続分に従って遺産の分割帰属を受けるだけなら、遺産分割協議(相続財産の分け方についての話し合い)を行う必要はありませんが、不動産は相続人全員の共有状態になるので相続人の中に重度の認知症で意思能力のない方がいる場合、売買や賃貸などの処分が困難になります。
重度の認知症で意思能力がなければ相続放棄ができず、遺産分割協議にも参加することができません。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人全員が平等であることが原則です。そのうえで話し合いをして全員で合意することによって協議が整います。認知症の方が協議に参加できないということは遺産分割協議を進めることができないということになります。そのかわり、成年後見人が代理で遺産分割協議に参加して話し合いを進めることになりますが、その配偶者及び直系血族は、利益相反となる立場になりうるので成年後見人になることはできません。(利益相反となる成年後見人の選任は法律により禁止されています。)
自分の死後、相続予定者の中に認知症の方がいる場合、遺言書を残しておくと、相続人全員で遺産分割協議をする必要がなくなります。遺言は遺言者による意思表示なので、遺贈を受ける人の意思能力は問題になりませんから相続人の中に認知症の方がいても問題になりません。
不動産や建築のことはもちろん相続や資金計画など、なにかお困りのことやご相談がございましたら、湘南・鎌倉で創業96年の建築会社の不動産事業部 リクシル不動産ショップ 株式会社イソダまでお気軽にお問合せください。お問い合わせはこちらから
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